認知症の「取り繕い反応」とは?
認知症の「取り繕い反応」(取り繕い行動)は、認知症の患者が自分の認知機能の低下を隠すために無意識に行う行動を指します。認知症が進行する過程で、記憶や認識、判断力が低下してくるため、患者は自分がその変化に気づき、周囲の人に弱点を見せないように工夫します。このような行動を「取り繕い」と呼びます。
具体的な例としては、次のようなものがあります:
- 質問を繰り返す
何度も同じ質問をする場合、患者は自分がその答えを覚えていないことを気づかれたくないため、前回の答えを無視して新たに質問を繰り返すことがあります。 - あいまいな返答
記憶や判断が鈍くなっていることを隠すために、曖昧な返事をすることがあります。たとえば、答えがわからなくても「そうだね」とか「わかるよ」といった返答をしてしまうことです。 - 自分ができないことを隠す
できない作業や問題に直面したとき、患者は「大丈夫だよ」と言って無理に取り組み続けることがあります。この場合、他人に自分ができないことを悟られないようにします。 - 行動の遅延や回避
物事をうまく処理できないと感じたときに、患者はその場を避けるために何かを「忘れた」と言ったり、活動を急にやめたりすることがあります。
取り繕い反応は、認知症の初期段階や軽度認知障害(MCI)の患者によく見られますが、病気が進行するにつれて、患者は次第にこれらの行動を維持できなくなることもあります。このため、周囲の人々は、患者が「取り繕い」をしている可能性に気づき、適切な支援を行うことが重要です。