介護保険制度は、平成12年4月にスタートして以来、この13年間で、在宅サービスを中心に利用が急速に拡大するなど、 高齢者の介護を社会全体で支えあう仕組みとして、着実に定着してきました。 今後、高齢化がさらに進み、介護を必要とする高齢者や認知症の高齢者の一層の増加が見込まれています。
そこで、高齢者が出来る限り地域で自立した日常生活を送ることができるよう、また、介護保険制度を将来にわたり安定的に運営していけるよう、制度全般について見直しが行われ、平成18年4月から新しい制度に変わりました。

介護保険とは?

介護保険制度の概要

介護保険は、加入用件を満たした人全員が強制加入する事になっています。 したがって、医療保険、年金保険、労災保険、雇用保険に続く、5番目の社会保険制度です。介護保険そのものを極端に説明させていただくと、要介護状態の予防をし、出来るだけ在宅介護を支援する、そして介護サービスを受ける際は利用者の自由選択を保障するといった事になります。

被保険者について

被保険者は40歳以上の人で、第1号被保険者と第2号被保険者の2種類に分類されます。
第1号被保険者は65歳以上の人で、要介護状態(常に介護が必要とする状態)や要支援状態(日常生活に支援が必要な状態)になった時に、必要なサービスを受ける事が出来ます。
第2号被保険者は40~64歳の人で、医療保険加入者である事が要件です。第2号被保険者の方は原則的にサービスを受けられません。ただし、「加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病を特定疾病」といい、この特定疾病(15種類の特定疾患に指定されている病気)によって 要介護状態や要支援状態になった場合にのみ、介護保険の申請をして認定されれば被保険者証が交付され、必要なサービスを受ける事が出来ます。逆にいえば、64歳以下の人は、特定疾病以外では介護サービスを受けられないという事です。そのため、給付対象はごく1部に限定される事になります。

保険料と利用者負担

保険料は40歳から払い込みがスタートし、一生涯続きます。
第1号被保険者の保険料は、居住する市区町村における介護サービスの普及度に応じて、所得段階別に決められます。
第2号被保険者の場合は、それぞれ加入する医療保険制度の保険者(健保組合等)ごとに保険料総額を割り振ったうえで、各医療保険の算出方法によって、保険料が決定されます。
原則として、サービスを利用する人は介護サービス費用の1割を負担します。施設では、この他に食費、生活消耗品などの自己負担分が加わります。また、支払った費用の1部は、所得税の医療費控除の対象となります。

介護保険サービスの種類

介護保険サービスの種類より閲覧ください。

介護保険適応外のサービス

在宅のサービスについては被保険者の要介護度に応じて利用できるサービスの上限額が定められており、支給限度基準額を超えるサービスの利用については介護保険適応外で、全額自己負担(10割負担)となります。介護保険の対象ではない「自立」の方も全額自己負担にて必要なサービスを受けることが出来ます。また、サービス利用にかかる保険対象外の利用料(通所サービスにおけるおやつ代等)についても全額自己負担となります。
在宅への配食サービスや寝具乾燥サービスなど、介護保険の対象とならないサービスも数多く実施されています。これらは一般に「横だしサービス」と呼ばれ、全額が利用者負担・施設のサービスについても、在宅との負担の公平性の観点から、居住費と食費を保険の給付対象から外し、その分を施設側が利用者から徴収する形となりました。
※ 市区町村が独自の判断により、上乗せサービス・横出しサービスを行っているところもあります。

地域における新たなサービス体系

地域包括支援センターの創設

高齢者の多様なニーズや相談に総合的に対応し、必要なサービスを包括的・継続的に調整する地域の拠点として、 「地域包括支援センター」を区市町村が主体となって設置します。
ここでは、保健師・社会福祉士・主任ケアマネージャーなどの専門職が配置され、 その専門知識や技能を互いに活かしながら相談者への総合的な支援を行います。

高齢者・家族など

地域包括支援センター
事業 内容
介護予防ケアマネジメント

生活機能の低下している高齢者や要支援1・2の高齢者を対象に、介護予防ケアプランを作成します。

総合相談・支援

地域の高齢者や家族からの相談に基づき、介護保険サービスをはじめ、様々な制度や地域資源を活用した総合的な支援を行います。

権利擁護、虐待早期発見・防止

高齢者が尊厳ある生活を送ることができるよう、「権利擁護」及び「虐待防止事業」の拠点として、虐待の早期発見・防止や成年後見制度の活用を進めていきます。

地域のケアマネージャーなどの支援

困難事例に関するケアマネージャーへの指導・助言やネットワークづくりなどを行います。

※平成18年4月に施行される「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援に関する法律」に基づいて事業を実施します。
(注)地域包括支援センターは、原則として平成18年4月から設置されますが、体制が整わない区市町村においては、最大2年間、設置が延期されます。

高齢者の自立生活を目指す

要支援1、2の方は、介護度が重くならないように予防給付があります。運動機能向上のための筋力トレーニング、転倒予防のバランストレーニング、口腔ケア、栄養指導などです。予防給付の窓口になるのは、市区町村に新たに設置された、「地域包括支援センター」です。 保健師、社会福祉士、ケアマネージャーなどの専門家に、介護について相談ができます。
予防給付、予防介護・・・地域包括支援センターによる予防プラン、予防サービスの実施・筋力トレーニング・低栄養予防・口腔ケア・転倒予防・うつ予防・ 閉じこもり予防・予防訪問介護・予防通所リハビリテーション

実際に介護保険を受けるには?

市区町村へ申請

市町村区の窓口に「介護保険申請書」があります。それに記入して、被保険者証を添えて、本人や家族、または依頼を受けた指定居宅介護支援事業者、介護保険施設が、窓口に提出します。

訪問調査

申請があると、市区町村の担当職員、または、依頼を受けた介護支援専門員(ケアマネージャー)等の「認定調査員」が、 全国共通の調査票を持って介護を必要とする人の心身の状況を把握する為に、家庭を訪問します。この調査票には全部で79項目あり、 本人が日常生活を送るに当たり、どういう障害があるかを見る事に重点がおかれます。この調査結果はコンピューター処理されて、 介護保険の審査の基本のデータとなります。これを「一時判定」といいます。

市町村区は1次判定とほぼ同時に、申請者のかかりつけ医に対して身体上または精神上の障害の原因である疾病・負傷の状況について、 主治医の意見書の作成を依頼します。
申請者が、かかりつけ医を持っていない場合は市町村区の指定医が申請者を診断して意見書を書きます。 意見書の費用は全部市町村区が支払いますので申請者負担はありません。

介護認定審査会で審査

認定調査員の調査票に基づいてコンピューター処理された一時判定結果と、かかりつけ医の意見書の二つをもとに、介護認定審査会が開かれます。 介護認定審査会は市町村区の単位に置かれる第三者機関で、委員は保健・福祉・医療の専門家を市町村区の長が任命します。 この審査会で「自立」「要支援 1・2」「要介護1~5」の七段階で決定されます。これを「二次判定」と言います。

認定結果の通知

市町村区は判定結果を、申請時に預けていた被保険者証に記載して申請者に通知します。原則として申請からここまで30日以内で行う事になっています。
一度認定された要介護度は、基本的には6ヶ月間有効とされます。実際は介護認定審査会が3ヶ月から1年以内の期間を定めることになっています。有効期間は被保険者証に記載されます。

認定の更新をする場合は、有効期間が切れる前に市町村から連絡があります。手続きは、ケアマネージャーに依頼することができますが、基本的に、申請の手続きと同じです。なお、判定結果に不服がある場合には不服申立てができます。また、通知を受けたあとに心身に大きな変化があった場合には、再申請をする事も可能です。

受けるサービスを選定、決定

要介護と認定された人は、12種類の在宅サービスと3種類の施設サービスの中から、自分に合ったサービスを選んで決める事が出来ます。ただし要支援者は施設サービスを受けられませんので、要支援1・2の認定の場合は住所地の地域包括支援センターへ連絡し、利用については契約が必要です。

ケアマネージャーは、サービス事業者の選択やケアプランの作成相談を行い、その人に合ったサービスが受けられるよう調整をする専門員です。なお、ケアプランの作成等のケアマネジメント費用には1割の利用者負担がなく、全額が保険でまかなわれ、ケアマネージャー選択も利用者が自分で行います。

特定疾病について

初老期の認知症(「アルツハイマー病」「脳血管障害」)

多くの認知症の原因は、脳の神経細胞の働きが衰える「アルツハイマー病」と、「脳血管障害」(脳梗塞・脳出血など脳卒中)の二つの病気です。

脳血管疾患(脳出血、脳梗塞など)

脳血管疾患(脳卒中)には、脳動脈がつまって血液の流れが妨げられて起こる脳梗塞と、脳動脈が破れて起こる脳出血があり、意識障害や麻痺による後遺症が残る場合があります。動脈硬化や高血圧を防ぐことなどが予防につながると言われています。

筋委縮性側策硬化症

症状は、ある日突然、持っている物を落としたり、足がもつれたり、ろれつが回らなくなるのがきっかけです。運動神経の細胞が原因不明のまま少しずつ失われ、変性性の神経・筋肉疾患で、筋肉の衰退と萎縮をもたらします。

脊髄小脳変性症

小脳及びそれに関連する神経路の変性を主体とする原因不明の変性疾患の総称です。

シャイ・ドレーガー症候群

シャイ・ドレーガー症候群は、自律神経系の変性を主体とする原因不明の疾患です。臨床症状は40~60歳代に、立ちくらみや失神、排尿障害などの自律神経障害で始まることが多く、このような症状がゆっくりと進行します。

糖尿病性賢症、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害

糖尿病に特有な3大合併症と呼ばれるものは、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症およひ糖尿病性神経障害をいいます。そのなかで網膜症およひ腎症は、高血糖が続く事により、細い血管が侵されておこります。

閉塞性動脈硬化症

閉塞性動脈硬化症は、足の血管の動脈硬化がすすみ、血管が細くなったり、つまったりして、充分な血流が保てなくなる病気です。
そのため、血液の流れが悪くなり、歩行時に足のしびれ、痛み、冷たさを感じます。されに進行すると、安静時にも症状が現れることが有ります。

慢性閉塞性肺疾患(肺気腫、慢性気管支炎、気管支喘息など)

COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、呼吸をするときに空気の通り道となる「気道」に障害が起こって、呼吸がしにくくなる病気です。
以前は肺気腫、慢性気管支炎と分けていた病気を、まとめてCOPDと呼ぶようになりました。
何年もかかってゆっくりと呼吸機能が低下するので、重症になるまで気づきにくいことが問題です。

両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

変形性関節症は関節軟骨の退行性変化を基盤とし、関節痛を機能障害を主訴とする慢性疾患です。

慢性関節リウマチ

慢性関節リウマチとは、関節の痛み・腫れ・炎症が全身に広がり、これらの症状が続くと関節の変形・破壊が進み、最終的には身体障害にまで至る病気で、主に20~40歳代の人が発症しやすく、男女の比率は1:4と女性に多い病気です。

後縦靭帯骨化症

後縦靭帯は脊椎の椎体後縁に沿って縦走する靭帯である。これが肥厚し骨化する病気が後縦靭帯骨化症(Ossification of Posterior Longitudinal Ligament/OPLL)です。

脊柱管狭窄症

脊柱管狭窄症とは、背骨の中を脊髄が通るトンネル(脊柱管)が狭くなり、神経を機械的に圧迫し痛みや痺れ、感覚麻痺などの神経症状が発生した状態を言います。

骨粗鬆症による骨折

骨粗鬆症とは、ひとことで言えば骨の成分が減ってくる病気です。骨粗鬆症になり骨の成分が少なくなってくるとどのようなことになるかと言いますと、骨がもろくなってくるので骨が折れやすくなります。

早老症(ウエルナー症候群)

早老症とは老化が正常よりも著しく早く始まってしまう病気のこと。

末期がん(一部を除く)

市町村区の窓口に「介護保険申請書」があります、それに記入して、被保険者証を添えて、本人や家族、または依頼を受けた指定居宅介護支援事業者、介護保険施設が、窓口に提出します。