認知症になられた方の本音

 

認知症になられた方の本音

認知症は、記憶や考える力に影響を与える病気ですが、病気を持つ人々の気持ちや思いは、周りの人にはなかなか伝わりにくいものです。今回は、認知症になった方々の本音に焦点を当て、その心の中にある声を、できるだけ分かりやすくお伝えします。

1. 「自分が変わっていくのが怖い」

認知症になったことに対して、多くの方が最初に感じるのは「怖さ」です。記憶が抜け落ちたり、普段の生活に支障をきたすようになることが、何より不安に感じられます。「昔はできたことができなくなってきた」「何をしていたか思い出せない」といった変化が、日々の生活の中で少しずつ現れます。それがだんだんと進んでいくことで、自分がどんどん「変わっていってしまう」ことに対する恐怖や不安が強くなります。

2. 「迷惑をかけたくない」

認知症になった方の多くは、家族や周囲の人に「迷惑をかけているのではないか」と感じています。記憶が薄れていったり、物事がうまくできなくなったりすると、周りの人たちが困ったり、負担を感じたりするのではないかと心配になるのです。「できるだけ自分でやろう」と頑張るものの、うまくいかないことが続くと、自己嫌悪に陥ることもあります。

でも、実際には家族や友人は、ほとんどの場合、理解とサポートを示してくれます。それでも、その「迷惑をかけたくない」という気持ちは、認知症の方々にとっては大きなストレスです。

3. 「人にわかってもらいたい」

認知症を抱えた方々は、しばしば自分の気持ちや状態を周りに理解してほしいと思っています。自分の感じている不安や恐れ、できないことへの悩みを、誰かにわかってほしいという気持ちが強くなるのです。しかし、認知症の症状が進んでいくと、その思いをうまく伝えることが難しくなってきます。言葉に出すのも、うまく表現するのも大変な時があります。

だからこそ、周囲の人々が少しでもその気持ちに寄り添い、無理に「どうしたの?」と聞かず、静かに見守ってくれることが、認知症の方々にとっては大きな支えとなります。

4. 「忘れてしまうことがつらい」

日々の出来事や大切な人の名前を忘れてしまうことは、認知症を患っている方々にとって非常につらいことです。「こんなことも忘れてしまうのか」と自分を責めることもありますし、また、周りの人に「また忘れた」と言われることで、さらに自己嫌悪に陥ることもあります。それでも、できるだけ「忘れたこと」を隠さず、受け入れてもらえることで、少し心が軽くなることもあるのです。

5. 「それでも、今を楽しみたい」

認知症の方々の本音の中には、「できるだけ今を楽しみたい」という強い気持ちもあります。病気にかかっているからといって、すべてが消えてしまうわけではありません。たとえ記憶が一時的に失われても、楽しい時間や心地よい瞬間を大切にしたいという気持ちは変わらないのです。

例えば、好きな音楽を聴いたり、好きな人と一緒に過ごしたり、少しの幸せを感じることで心が安らぐこともあります。「もう無理かもしれない」と感じることがあっても、その瞬間を大切にすることで、少しでも前向きに生きる力が湧いてきます。

6. 「一番の願いは、優しく接してほしい」

認知症を患った方々の本音で一番大切なこと、それは「優しく接してほしい」ということです。認知症は、身体が元気でも心がしんどくなることがある病気です。だからこそ、周りの人々からの優しさや思いやりが、何よりも大きな支えになります。「できないことがあっても、焦らず待ってくれる」「間違えても、笑って受け入れてくれる」という環境が、認知症の方々にとっては安心感を与え、日々を少し楽にしてくれるのです。

終わりに

認知症になった方々の本音には、恐れや不安、自己嫌悪などさまざまな感情が詰まっていますが、それと同時に、今を大切にしたいという前向きな気持ちもあります。周囲の人々は、そんな本音に寄り添い、理解し合いながら支えていくことが大切です。認知症を患っている方々の「今」をできるだけ心地よく過ごしてもらうために、私たち一人一人ができることを考えていくことが、もっと大切だと思います。